松下幸之助が、創業以来、折々に店員に話していた商売に関する考え方をまとめたものが「商売戦術30箇条」。昭和11年1月に創刊したPR誌『松下電器連盟店経営資料』の巻頭に“商売戦術30箇条”として発表された。
 商売戦術30箇条
 第1条 商売は世の為人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり。
 第2条 お客様をじろじろ見るべからず。うるさくつきまとうべからず。
 第3条 店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何。
 第4条 棚立上手は商売下手。小さい店でゴタゴタしている方却ってよい場合あり。
 第5条 取引先は皆親類にせよ。之に同情をもって貰うか否か店の興廃の岐(わか)るるところ。
 第6条 売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永久の客を作る。
 第7条 お客様の小言は神の声と思って何事も喜んで受け入れよ。
 第8条 資金の少なきを憂うる勿(なか)れ。信用の足らざるを憂うべし。
 第9条 仕入は簡単にせよ。安心して出来る簡単な仕入は繁昌の因(もと)と知るべし。
 第10条 100円のお客様よりは1円のお客様が店を繁昌させる基と知るべし。
 第11条 無理に売るな。客の好むものも売るな。客の為になるものを売れ。
 第12条 資金の回転を多くせよ。100円の資本も10回廻せば1000円となる。
 第13条 品物の取り換えや返品に来られた場合は、売った時よりも一層気持ちよく接せよ。
 第14条 お客の前で店員小僧をしかるくらいお客を追い払う妙手段はない。
 第15条 良き品を売ることは善なり。良き品を広告して多く売ることは更に善なり。
 第16条 自分の行う販売がなければ社会は運転しないという自信を持て。そしてそれだけに大いなる責任を感ぜよ。
 第17条 仕入先に親切にせよ。そして正当な要求は遠慮なく言え。
 第18条 紙1枚でも景品はお客を喜ばせるものだ。付けてあげるもののない時は笑顔を景品にせよ。
 第19条 店のために働くことが同時に店員のためになるよう、待遇その他、適当の方法を講ずべし。
 第20条 絶えず美しい陳列でお客の足を集めることも1案。
 第21条 紙1枚でも無駄にすることはそれだけ商品の値段を高くする。
 第22条 品切は店の不注意、お詫びして後「早速取寄せてお届けします」とお客の住所を伺うべきである。
 第23条 正札を守れ! 値引は却って気持を悪くするくらいが落ちだ。
 第24条 子供は福の神──子供連のお客、子供が使いに来ての買物には特に注意せよ。
 第25条 常に考えよ、今日の損益を。今日の損益を明らかにしないでは寝に就かぬ習慣にせよ。
 第26条 「あの店の品だから」と信用し、誇りにされるようになれ。
 第27条 御用聞きは何か1〜2の品物なり、商品の広告ビラなり持って歩け。
 第28条 店先を賑やかにせよ、元気よく立ち働け、活気ある店に客集る。
 第29条 毎日の新聞の広告は一通り目を通しておけ。注文されて知らぬようでは商人の恥と知るべし。
 第30条 商人には好況不況はない、何れにしても儲けねばならぬ。

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